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2005/12/07

戦場のピアニスト

戦場のピアニスト
戦場のピアニスト
  • スタジオ: アミューズソフトエンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,990
  • 発売日: 2003/08/22
  • 売上ランキング: 4,289
  • おすすめ度 4.26

これはあるピアニストの実話。ユダヤ人であるがために迫害され、
一人で逃げながら、それでも指はずっとピアノを弾いていた、そういう男の物語。

戦争を、そしてドイツのユダヤ人虐殺を描いた映画は多いと思うけど、
これほどまでに淡々と、リアルに描かれると本当にきついね。
「ライフ・イズ・ビューティフル」はやはり悲惨だったし想いは十分伝わったけど、
それでもこの映画と比べたらただのファンタジーだ。

この映画ではゲットー(ユダヤ人居住区)の暮らしづらさが映像から如実に
伝わってくる。狭いし人が異様に多い。常に大渋滞な道。
そして道には死体が転がっている。常に転がっているのだ。
飢え死にしたであろう死体、そして道に落ちたご飯をなめる男の描写、など
とにかく目をそらしたくなる光景が常に広がっている。

気になる女性とも別れそこに送り込まれたピアニストのシュピルマンは、
その後収容所に家族もろとも送られそうになるが、
顔見知りの警察の男にすんでのところで命を救われる。
それから彼は一人で、知人や友人のつてを頼って逃げ続ける。
最後には、元ゲットーだった廃墟で一人、家をあさって見つけた缶詰を
こじあけていると、そこにドイツ兵が立っていて・・・

彼はドイツ兵の言われるままにピアノを弾く。
そして命を救われる。

彼を奇跡的に救ったのはピアノだった。
彼が類稀なる曲を演奏できる芸術家であること、それが彼をずっと救い続けた。
彼の家族を見捨てて彼だけを助けた警官、命を賭してかくまってくれたポーランド人達、
そしてドイツ兵も、彼が何年かぶりにやっと弾けた演奏に心を打たれたのだった。
ピアノ、更に言うと音楽、芸術は民族や人種、国を超えて人々に平等に何かを伝える。
彼の指から弾き出される演奏が、彼らに何かを伝えたのだ。そうとしか思えない。

しかし彼は逃げている間一度もピアノが弾けなかった。
でもずっと、彼の指は動き続け、メロディを奏でていた。
何気ない場面で彼が指を動かしているのを見たとき、私は泣きそうになった。
そして残酷なことに、匿われている部屋にはピアノが。でも物音をたてられず、
彼はその上から指を動かし、メロディを奏でる。
そんな情景が繰り返されたから、ドイツ兵の前で弾いてみせるピアノには、
とんでもない力が宿っていた。廃墟をぐらぐらと揺るがす力が。
映画のシーンもすごかったが、実際の演奏はそれはそれはすさまじかったに違いない。

私なんか楽器をやってて、いつでも好きなときに吹けて、聴けて、
で「もうしんどいからやめちゃおうかな」なんてたまに思う。
なんて贅沢な時代に生きてるんだろう。
好きなときに好きな表現が出来ない、表現するだけの力があるにもかかわらずできない、
それは戦争よりも地獄なんじゃないのかな。だから戦争って地獄なのかな。

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コメント

ざれこさん、こんばんは。
ちょっと古いのですが、DVD観てブログに書いたのでコメントさせていただきます。

そうそう、この映画に関してはもっといろいろ書きたいことあったはず、と思ってたことを全部ざれこさんが書いてらっしゃったので胸がすっとしました。

今の私たちはあまりにも平和で恵まれているんだということを認識しなくてはいけないということを気付かせてくれた映画でした。

TBさせて下さいね。

投稿: 由松 | 2006/03/28 20:25

由松さん
こんばんは。この映画、由松さんの感想とか読んでて思い出して、また哀しくなりました。
最後のピアノにすべてが表現されてた気もします。普通にやりたいことが出来る今って、幸せですよね。辛い映画でしたけど、いまだに印象は強いです。
主演の方は「キングコング」では脇役で、どうしたんだろ、って感じでしたが(笑)ここでは迫真だったなあ。

投稿: ざれこ | 2006/04/04 00:15

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» 『戦場のピアニスト』 [練習オタクの日々]
ロードショー時に劇場で観たものをDVDにて再び鑑賞。 前回観たときは「ピアニスト」という部分ばかりに目がいっていたが、今回は「戦場の」という部分が印象に残る。 ポランスキー監督はホロコーストの被害者であり、様々な理由からこのテーマでの作品作りを避けていたそうで、本作の原作に出会って初めて第二次世界大戦時のユダヤ人に対する虐待その他の事実を映像に残す決心がついたそうだ。 確かに原作者が再びピアノを弾くために舞台にあがりたい�... [続きを読む]

受信: 2006/03/28 20:26

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