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2006/02/22

博士の愛した数式

博士の愛した数式
博士の愛した数式
  • アーチスト: 寺尾聰
  • 発売元: 角川エンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,808 (23% OFF)
  • 発売日: 2006/07/07
  • 売上ランキング: 62

平日、出張で疲れ切った日だったが、レディースデーの最後のチャンスと思い、
疲れをおして観に行った。
なんか不思議な感覚に陥った。ずーっとここに座ってずーっとこの映画を
観ていたかのような錯覚。すごく長い間、この世界に浸っていたような気がした。
いや、けっして退屈だったとか長かったとか眠かったとか、そんなことじゃなくて、
いい意味で、である。そしてずーっとこの世界にいたいような気もしたが、
映画は2時間で終わってしまった。残念だ。

80分しか記憶がもたない数学博士。義理の姉と住んでいるが、博士は離れに住んでいて
行き来はない。そこにやってきた若い家政婦。10歳の息子がいると博士に言ったら、
いてもたってもいられなくなった博士は、彼を家に連れてこいという。
そして家政婦が連れてきた息子には、頭がひらべったいからと
「ルート」という名前がつけられる。

そのルートが大きくなって数学教師になって、最初の授業で博士とのすばらしい日々を
語る、という形式をとっていて、映像にしづらい数学の世界が黒板に展開されることで
私もだいぶとわかりやすく観れた。
博士の家にも何箇所も黒板があって、これは記憶がなくなるので覚え書きを書くために
置いてるのもあるんだけど、博士もよく黒板に数字を並べては、家政婦に教えてくれる。

だからとてもよくわかった。オイラーの法則以外は、だけど。
この数式に込められた意味は深すぎて、映画が終わってからもじっくり考えてみたりもした。

話は淡々と過ぎていき、家政婦と息子と、子どもを溺愛する博士とのふれあい、
野球が大好きな博士とルートが、野球を通じてつながっていく様が、背番号とか、
江夏の活躍を示したビデオとかの小道具で微笑ましく描かれる。
桜が咲き乱れ、緑が多くて空気が美しそうな、ニッポンの田舎といったその場所で、
彼らが過ごす日々。
原作を知ってるからかもしれないけど、もう博士が出てきただけで涙を誘う。
だから何気ない会話を聞くだけでも泣けてきちゃって困りました。
子どもに対して過剰に反応する博士の姿とか。けっこう微笑ましいシーンも多いんで、
泣いたり笑ったり、とても感情豊かに観ました。

ラストが原作と違うんですね。というか、途中で終わってると言ってもいいかもしれない。
ラストで号泣の予感がしてたんでちょっと拍子抜けはしましたけど、映画として
美しい終わりだったと思う。

ラストまで観て、最後に朗読されたウイリアム・ブレイクの詩を見ながら、
改めてその世界観の深さに呆然とする思いでした。
映画をまとめあげる、すばらしい詩でした。

80分しか記憶のない博士が、人間の生まれる前から、誰にも見つけられなくても存在していた
数字と交流し、神様の手帳をひもといていく。
記憶がなくなっても、その時生きた時間は永遠にどこかに記憶される、そんなことを思い、
どこにもないと思っていた永遠というものがもしやあるのかもしれない、といった風な、
なんだかそんなことまで思ってしまったのだ。
もちろん、原作の時点でその深い世界観は根底に流れていたわけだけれど、
映画と原作との見事なコラボレーションによって、更に深められたように思う。
すばらしい映画だった。

少し不思議なことだが、薪能のシーンが印象にいつまでも残っている。
あと、音楽も印象的だ。美しいソプラノの声は、最初は大仰な気がしたが、
荘厳といってもいい映画を観た後、ラストに聞くととてもなじんだ。

寺尾聰はさすがの演技。イメージが違う気がしていたが、博士の猫背まで
見事に再現、そのまんまだった。ちょっと頑固な微笑ましい博士を好演してて、好感がもてた。
深津絵里は大好きな女優さん。きつい女の役が多いけど本人はとてもふわふわした
雰囲気をもっておられると思うんだけど、今回その柔らかさと芯の強さが加わった
魅力的な家政婦になってました。博士が忘れるたびに「はい、私には息子がいるんです。
ルートと呼ばれています」と伝える時の笑顔がとてもステキだった。
そして浅丘ルリ子。存在感がものすごい。原作でも義理の姉はミステリアスな存在だけど、
浅丘ルリ子がやったことで、その姉に更に血肉が通った感じ。博士との過去の暗いドラマをも
想像させる圧倒的な演技。
そんなすばらしい俳優陣に支えられ、博士の愛した数式がまた更に広がりを見せたことが、
私にはとても嬉しかった。いい映画でした。

(原作が大好きすぎるので、あまり客観的に感想書けてません。すんません。
原作の感想はこちらに書いています)

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コメント

こんにちは、toxandoriaと申します。TBありがとうございます。

映画『博士の愛した数式』は素晴らしい映画でしたね。時間が経っても感動が消えません。

とても流麗な音楽を加古 隆さんが担当してるとは知らなかったので驚きました。加古さんの古くからのファンなので喜びが倍増しました。

この映画の良さを語りつくすことができそうもないので、知人たちへは、とにかく映画を観るように勧めております。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

投稿: toxandoria | 2006/03/06 11:01

TBありがとうございます。

素晴らしい映画の感動を共感できて嬉しいです。

テーマ音楽(加古 隆&森 麻季)も忘れられず、早速、CDを求めて聴いています。

映画のワン・シーンごとに小タイトルが付いて
います。

これも是非お勧めです。

投稿: toxandoria | 2006/03/07 23:36

toxandoriaさん
こちらこそTBありがとうございます。そちらに掲載されていたウイリアム・ブレイクの詩、原文が読めて嬉しいです。私もすごく印象に残っていましたので。ありがとうございました。
音楽も、エンドロールで聴くと深く染み入るような感慨がありましたね。とてもいい映画でした。サントラも手にとってみたいです。

投稿: ざれこ | 2006/03/08 00:21

こんにちは。
やっと先週見ることが出来ました。
函館では 今頃やっと公開なのです、この映画。

ざれこさん同様 原作が大好きなので 期待半ば 不安感半ばでしたが
すごく素敵な映画で 心地よかった。
まったく いい意味で 眠りを誘う映画です。
その前に見た 有頂天ホテルとは 映画として両極である感じ。どちらもそれぞれ大好きです。

浅丘ルリ子さん 本当によかった。着物姿で杖をついている立ち姿だけでも 美しく 映画の中での存在感は 圧倒される。まさに「女優」ですね。
「木曜組曲」の浅丘さんも よかったし これからも どんどん活躍して欲しい女優さんです。

投稿: ゆーらっぷ | 2006/03/18 11:44

ゆーらっぷさん
遅くなってごめんなさい。
浅丘ルリ子さんの存在感は凄かったですね。主役級でした。原作の義理の姉の存在が、この人で完成したような、そんな気すらしました。凄いです。

投稿: ざれこ | 2006/04/03 23:40

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