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2006/05/10

ロスト・イン・トランスレーション

ロスト・イン・トランスレーション
ロスト・イン・トランスレーション
  • 価格: ¥ 3,990
  • 発売日: 2004/12/03
  • 売上ランキング: 1,730
  • おすすめ度 3.29

ウイスキーのCM撮影のため、東京にやってきたハリウッドスター。今は映画にも出ておらず、
少しぱっとしない。異国で、言葉が通じない中仕事をしている彼、同じようにホテルにずっと
滞在している若い女性と出会う。女性はカメラマンの夫と一緒に日本にきていたが、
夫の仕事中ずっと放ったらかされていた。
その二人が、孤独を強いられる国で、少しずつ近づいていく。

日本って、外国からみたらこんなにあかん国なんや、とちょっと驚愕をもって
この映画をみてしまいました。「キルビル」とか「SAYURI」とかなら、
そんなんちゃうって、とつっこんで見れるんだけど、この映画は違う。
私たちって、海外の人にこんな風に接しちゃってるな、って、すごい思った。リアルだ。

生け花の先生が、女性に話しかけてちょっと花を生けさせて、
「オッケーオッケー」なんて言う。何がOKなのか。
カメラマンがスターに対して、「もっと007みたいに」なんて要求を出してくる。
ウイスキーを飲むだけでいいのにどうして007みたいに、なのか。
007が、っていうのは、日本人に対して「サムライっぽく」なんて言うのと同じだよね。
日本人、なんか言うことおかしい。外人への憧れがすごいあるんだけど、
それがなんか歪んでるし、なんかずれてる気がする。
その感じ、そういう空気がずっと流れていて、これが海外から日本にきた人達の実感なんだ、
って、こちらにも伝わってきてしまった。日本って、過ごしづらいんだな。

私も英語が全然駄目で、だから接客のバイトとかしてても覚えたのはこれだけ、
「Just moment please.」どうやら「少々お待ち下さい」らしいのだが、これだけ、
全然伝わらない発音で言っては逃げ、英語を喋れる人をひたすら探す、そんな風だった。
そうやってつい逃げる、多分大多数の日本人は、逃げたくはないけど逃げざるを得ない、
そんな感じなんだろう。でもそれって、海外の人からみたら、寂しいよね。
そういう、外国人を遠くから眺めてしまうことで、それで彼らを孤独に追いやってるんだよね。
なんてことを生々しく感じた。なんか、閉鎖的な国だよな、日本。精神的鎖国。

映画の台詞で、「どうして日本人はrとlの発音が区別できないのか」という台詞があって、
忌々しげにスターはこういう。「わざとやってるんだよ、きっと。楽しんでるんだ」
違うよー。とつっこみたかった。日本人は、ちゃんと喋ってるつもりでいるんだよ。
喋れる人は、きっと。
でも、できないの。rとlが。わざとじゃない、本当は、私たちだって仲良くしたいと
思ってるんだよ。なんて伝えたかった。そんな誤解は寂しい。
でも仕方がないのかも知れない。
映画でも、病院で、日本人のあけっぴろげなおばちゃんとうちとけかけるシーンがあって、
そこで少し温かくなった。言葉が通じなくても伝わることはあるはず。
日本人、おそれずにいこうよ。なんて、自分に言い聞かせている。

と、日本人の私はここまで思ってしまうが、これ、別に
「日本ってこんなにあかんのよ」ってことを描きたかった映画じゃない。
孤独な環境に陥ってしまう日本で、より孤独になっていた男女が出会って、
恋愛でもない、緩いけれども強い絆を刹那の間にはぐくんでいく。そんなドラマ。
孤独をあらわす手段として、異文化である日本の風土がある、ような。

ハリウッドスターが、マシューのベストヒットTVに出るシーンがあるんですよね。
マシュー、いつのまにか海外進出してるやん、ってびっくりしたんだけど、あれって、
一見ばかばかしい番組じゃないですか。マシューは金髪だし。
その番組に出て、マシューと一緒にはしゃがされて、それをホテルのベッドで
たった一人でみているハリウッドスター。そこに漂う虚しさは半端じゃなかった。
彼が今や過去のスターであって、忘れられかけた存在であること、
彼が今の生活にどれだけ虚しさを感じているか、それがすごく伝わってしまったのだ。
恐るべしマシュー。・・・いや、その空気を作り上げてしまったこの映画に感服。

そんな日本で出会う、孤独な二人。
愛や恋じゃないけど、短い間のふれあいだったけど、
二人は絶対この出会いを忘れないんだろうな、そんな関係。
孤独な国で出会い、お互いに自分の夫婦生活や、自分の人生をふと振り返ってみてしまう、
そんな出会い。
お互いがこの出会いで明らかに前に進めたり、幸せになったりするわけじゃないけど、
ぼんやりとした視界が少しクリアになるくらいには、何かを得たんじゃないかな。

殺伐とした空気を完璧に作り出して、そこにほっと生まれるふれあいに、
私も少し温かくなれました。いい映画です。日本人じゃなければ、もっと純粋に
いい映画と評価できたんだろうと思うけど、日本がここまでちゃんと描かれた映画は
なかったと思うから、それもあわせて、評価します。ちょっと苦笑い、しつつ。

京都で、主人公が結婚式を見るシーンがあるんですが、雪の中を歩く高島田姿は
とても美しくて、結婚生活に迷っている主人公の心情をふとあらわしたような、
素晴らしい映像でした。日本も捨てたもんじゃないぞー

主役2人がすごくよかったです。孤独な中年男性もお茶目かつつやっぽく、
スカーレット・ヨハンソンは身近な感じなのに高潔で、美しかった。
日本が舞台だけど、マシュー以外には有名な俳優さんがいなかったのも、
ドキュメンタリーっぽく日常の雰囲気が現れて、良かったです。

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コメント

こんばんは、TB&コメントありがとうございます。
そうですね、この日本観は全然共感できないものが多かったですw、途中オイオイと思った部分もかなりありましたよ。
その極端な描写でもって主人公達の疎外感を描いて見せるというのは上手いというかずるいというか(爆、日本はしてやられちゃった感ありますねw
ロストインもそうですが、この監督のヴァージン・スーサイズも女性ファンが多いらしいですよ。
ココログさんにTBできない状態が続いているのでコメントだけで失礼します。

投稿: lin | 2006/05/12 01:24

linさん
ほんま、日本はしてやられた感じですよね。日本人じゃなきゃ、「わかるわかる、日本ってそうよな」と思いながら観れたんでしょうね。あーあ、みたいな。でもその見せ方はうまいなと私も思いました。

投稿: ざれこ | 2006/05/14 03:03

すごく独特の映像というか・・キレイだと思いました。
ビル・マーレーってうまいなぁ~と思ったし、海外にいる二人の不安というか孤独感みたいなものが、すごく感じられました。
日本は・・・笑いましたが

投稿: D | 2006/05/18 09:05

Dさん
ビル・マーレーってコメディアンなんですよね、基本的には。でも哀愁漂ってて渋くていい感じでしたね。ぴったりでした。映像も印象的でした。日本はねえ・・(苦笑)

投稿: ざれこ | 2006/05/19 09:45

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