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2006/05/14

父と暮せば

父と暮せば 通常版
父と暮せば 通常版
  • アーチスト: 宮沢りえ
  • 価格: ¥ 3,990
  • 発売日: 2005/06/24
  • 売上ランキング: 3,998
  • おすすめ度 4.67

どこかにも書いたと思うけど、私の誕生日は8月6日。
広島に原爆が落ちた日だ。
だからか、小学校とかで見せられた戦争映画とか、
あまり他人事でない感じがして、熱心に見ていた、つもりだし、
誕生日の日の朝には黙祷もしていた。

でも、この映画観て思った。やっぱり、わからないんだな。
戦後産まれの私には、なんにもわかっちゃいないんだ、と。

広島にピカが落ちて3年後。父を亡くして一人で暮らす美津江だが、
ある日父がひょっこり戻ってくる。いきなり戻ってきた父と、
当然のように話をしている美津江だが、父は言う。
「お前が木下さんを一目見て、ときめいたじゃろ。そこからわしの体は生まれたんじゃ」
「でも、うちはしあわせになってはいけんのじゃ」
美津江は頑なに、幸せを拒否し、父はそんな美津江を説得しようと・・・

舞台劇の映画化なので、あえてずっと家が舞台。
父は最初から当然のようにそこにいて、美津江と喋ってて、なんだか日常的で平和で、
あまりに舞台的で最初はちょっと面食らうし、ちょっと眠い、けど、
ピカの話になると二人の話は鬼気迫る。布団にもぐって映画を観ていた私は、
だんだん起き上がって座って枕を抱きしめて見た。だって、涙が耳に入ってきて。
で、だーっと流れる涙をそのまんまにして私はずっと観続けたのだ。

「ピカの温度は12000度、太陽二つ分じゃ。なんちゅうもん落としてくれたんじゃ」と言う
父の話に泣かされ、
「生きてるのがおかしいんです、死んで当たり前じゃったんじゃ、生きてるのが申し訳ない」と泣く美津江に泣かされ、私はもう泣いてばっかり。
ぐろい描写も当時の写真も何一つないのに、原爆瓦一枚、親子の会話だけで
原爆の悲惨さを痛切に伝える。なんて説得力。
でも、「それでも生きて、後世に何かを伝えなければいけない」
そんなメッセージまで、伝えきる。

あーなんもわかってなかった、と、そして思い知るような、そんな映画だ。
死んで当たり前、生きてるのが申し訳ない、って泣く人が一人でもいる世界はもうごめんだ。
小学生にみせるんだったらこれ1本で充分でしょ。絶対、伝わります。
で、伝えないといけない。と思う。

原田芳雄と宮沢りえの存在感とその演技、素晴らしいですね。宮沢りえはすごく好きな
女優だけど、やせ細って顔を崩して泣く姿、最後の笑顔、どれにもすごく揺さぶられました。
人を揺さぶれる演技ができるって、もう本当にすごいと思う。
原田芳雄も、ほのぼのとしつつも、時折にじみ出る悔しさと、娘を思う愛情溢れる台詞には、
何度も泣かされました。最後に娘を説得する台詞の、なんと説得力あることか。
脚本の力も大きいでしょうが、この二人でないとここまで胸に迫ったかどうか。

広島弁で原爆を描いた映画とかって、小さい頃には全然覚えがない。皆、標準語だったような。
でも、そこにいるのは、ここで喋ってるように、広島の人たちなんだから、そうでないと、
いけないよね。そのリアルさと、広島弁独特のイントネーションが場を飄々と温かくさせてて、
それも凄く良かった。だからかなあ、この説得力、全然説教くさくなくて、余計身に染みる。

最後に舞台の外が映し出され、原爆ドーム(そういやこの舞台は原爆ドームだった・・)
の足元に可憐に咲いた2つの花が、小さくて強い生命の象徴みたいでとても印象的。
情緒溢れる家の舞台も、たまにしか流れず、単純なメロディだけに哀しみが際立つ音楽も、
もう何も文句つけようがない。

でも唯一驚いたのは、浅野忠信の眼鏡・・・。
あれは、どうしてかけちゃったのかね。時代考証してああなっちゃったか、
浅野氏のオーラをあえて消そうと思ったのか。誰かと思ったよ。
浅野氏の存在感は、あれでよかったと思うけどさ。

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コメント

TBありがとうございました。
<この二人でないとここまで胸に迫ったかどうか
そうですね、主演二人の演技力がないと成立しない作品だったと思いますよ。
舞台劇っぽいのが実は苦手なんですが、この映画はそんなものを通り越して感動しました。
ラストの原爆ドームのシーンは鳥肌物だったですw
また宜しくお願いします(・∀・)ノ

投稿: lin | 2006/05/16 00:06

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 父と暮せば 通常版 「父と暮せば」 ★★★★ THE FACE OF JIZO (2004年日本) 監督:黒木和雄 原作:井上ひさし キャスト:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信 公式サイト [続きを読む]

受信: 2006/05/16 00:01

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