嫌われ松子の一生
奇跡のような映画だった。原作読んで全部話を知っている私でさえ、最後は号泣した。
映画終わって、「まーげてー、のーばーしーてー」とふと最後に流れてた曲を口ずさんでしまい、
で、それだけで思い出し泣きできるくらいの号泣だ。後ろの席の人(兄ちゃん)も泣いていた。
普段から原作がある映画にはいろいろ思うところはあって、あれが違うこれが違うと
不満ばかりが目に付いてしまう。一旦出来たイメージは映画を観たら崩れるに決まってるのに、
それでもつい観にいってしまうのは、この原作を映画がどうやってアレンジしてるのか、
映画は映画で映画として、原作では出しえない魅力があるのかないのか。
そんなことが気になったり、キャスティングが気になったり。
そもそも映像化、なのだ。原作より想像力は限定されるけれど、
できることは山ほどあるはずで、人間を実体化できたり、すごい音をつけてみたり、
映像を美しくしてみたり、どうにでも転ばせられるはずなのに、
中途半端にしか転びきれない作品が多いのはどうしてだ。
でもこの映画は、原作に忠実に物語を再現しつつ、なお、映画として原作では出しえない魅力を
最大限に出し切った、素晴らしい作品。そうよ、こんな映画を待ってたのよ。
このくらいやってもらわないと、映画化の意味はないのだ。
原作にはここまでの魅力を正直感じなかった私なのに、もう松子の世界に虜である。
映画完成でこの物語は初めて完成しました、息づきました、と言い切ってしまいたいね。
素晴らしい。いや、奇跡だ。
キャスティングがまず奇跡的にはまっている。お笑い芸人やミュージシャンを多用したり、
また大事な役どころに、顔だけの棒読み俳優(と思っていた)伊勢谷友介なんかを
使っちゃったりして、キャストを見ただけで全員はまってたけど、
ぴったりなのは見た目だけなんちゃうん?と疑いつつ観にいったのだが、
全員本当に見事にはまっていた。一瞬しか登場しない人がほとんどなのに、
その一瞬が奇跡的にしっくりくる。あの伊勢谷友介でさえ名優に見えたぞ。
本当に名優だったのか、もしくはこの映画が起こした奇跡か?というくらい。
冒頭で佐伯先生役で出て来た谷原章介のはまりぶりがむちゃくちゃツボにはまって、
そのあとのカンニング竹山のキレ演技(いつもどおりなんやけどね)にもうけてしまい、
もしやこの映画、全編ギャグでは?といぶかしんだが、
おかしいのは佐伯先生だけだった。谷原章介、いけてたなあ・・・
全員そういったわけでよかったんだけど、やたら覚えてるのはクドカン。
あの一瞬の表情の凄さといったら。武田真治もダメっぽくてよかったなあ・・・。
本当に一瞬でいなくなるけど・・・。友達役の黒沢あすかも良かったしな。
あ、でもね、松子の妹役に市川実日子を配したのがむちゃくちゃ正解だったと思う。
大事な役だけに、あの笑顔は素晴らしい。(嗚呼、今思い出し泣きをしかけた)
そして演出。じめっとしがちな不倫の話、トルコ風呂での生活、さらに刑務所での生活、
それをぱあっとミュージカル仕立てで流してしまったその手腕には舌を巻く。
個人的にBonnie pinkが好きなので、演技してるだけでおおって思っちゃったけど、
青い髪振り乱して歌うトルコ風呂ミュージカルが彼女らしくてかっこよかった。
でも、どんな場所ででも真面目に不器用に生きてしまう松子の姿をその映像にちゃんと
織り交ぜてて、スクワットしている松子とか、ムショでアイロン当ててる松子とかが
リズムに合ってるのがなんか切なくて、ただのお遊びミュージカルになってないのがすごい。
そしてムショがあけて、松子が歩き出して、伴奏が消えて声だけの歌が流れるのだが、
もうそこでは鳥肌がたった。桜の中を歩き続ける美しい松子、切ない歌声だけが響く。
すごいシーンだ。ムショからあの流れだけ何度再生されても私は鳥肌立てると思うな。
で、全編に流れる「まげてのばして」というワルツの曲がまた切なくってねえ。
最後、歌詞が「おうちに帰ろう」なんですよね。松子は若いころに家出しちゃってるし、
父親が妹ばかりに愛情を注ぐので、ずっと寂しかった。でも出て行っても、ずっと帰りたかった。
ずっと、誰か一緒にいてくれる人、家族、そんなものが欲しくって、たまらなかったんでしょう。
その歌を聴きながら松子を思い、最後「おうちに帰ろう」と歌い終わる頃には、もう、泣けます。
(思い出し泣き中)多少過剰なくらいのラストの歌と映像が、さんざん号泣したあとの私を
さらに泣かせてくれました。映像と歌と役者の演技が一体となって、
松子の寂しさと孤独と幸せを、作り上げていったんだと思います。いやあ、素晴らしかった。
個人的には、50歳過ぎて、一人ぼっちで、友達一人もいなくて、ぶくぶく太って臭くなって、
嫌われ松子になってしまう、そんな彼女の姿に自分の未来をふと見出してしまい、
それがまた泣ける原因だったのかもしれない。でも私は松子みたいに誰にも
何も与えられやしないし、あんな神々しくはなれないのだ。さらに不幸じゃないか?
松子はどん底の不幸にいただけ、男と過ごしている間は幸せそうだったじゃないか?
鼻血出してもあざ作っても「でも、一人より幸せ」と・・・。
そんな幸せも知らず、松子の末路だけ身につまされる私だった。ダメじゃないか、それって。
中谷美紀の演技は凄すぎた。もう神々しいと言っていいくらい。
あれだけ奇跡的に脇役が出揃ったというのに、最後に思い出すのはひたすら中谷美紀。
素晴らしいですね。本当に大好きな女優さんだけど、この作品がきっと彼女の代表作になると
思うし、それは一ファンとしてもとても嬉しいことです。
松子は中谷美紀によって、この世に生を受けた、そう思うくらい、良かった。
そして最後に監督、やばすぎませんか?あの原作をこの映像にするセンスは、
本当にただものじゃないです。あの長い原作を2時間半にコンパクトにまとめあげて
ストーリーはほぼ完全に網羅、そして演出も過剰だけどちゃんとツボを心得てる。
松子が描いた夢の世界、そして現実を見事に映像化してくれて、なんだかとても嬉しかった。
ありがとうを言いたいくらいです。
安易なドラマ化はやめて欲しいんだよなあ・・・。連続ドラマ化決定だそうです。
あの原作を普通に忠実に再現すると、ただの陰気なドラマですからねえ。
主演は内山理名だそうで。ああもうねえ、見ないね、絶対。内山理名が嫌いとかでもなく、
松子は永遠に中谷美紀で、それ以外はありえないから。
※余談ですが。劇中に出てくるテレビでサスペンスをやってて、
片平なぎさが崖に犯人を追い詰めてるんだけど、犯人役が本田博太郎。
つい最近、グループ魂の「本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~」って
曲をPVで観たところだったので、これものすごい笑えました。
本田博太郎はやっぱり犯人なのですよ・・。
わかる人しかわからないネタでごめんなさい。
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コメント
映画もちろん素晴らしかったんですが、
感想がまた言いたいことを全部書いてくださってて
読みながら思い出し泣きしそうになりました。
勝手ながらTBさせてもらいました。
投稿: ゆうこ | 2006/07/04 20:21
公開終了の間際に観ましたが面白かったですね。
ドラマ化は知らなかったです、当たるとすぐタイアップって映画の感動が薄れる気がするなぁ。
投稿: lin | 2006/07/11 01:45